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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座61 退塾者を一人も出さない決意を!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2008年9月私塾界掲載分

この紙上セミナーの連載が始まって、丸5年以上が経ちました。連載当初は3回シリーズの予定で始めたのですが、気が付けば短くない歳月が過ぎました。その間、本誌を発行している全国私塾塾情報センター(現株式会社私塾界)が主催する「全国縦断学習塾経営セミナー」をはじめとする多くのセミナーで全国各地を訪問し、多くの塾経営者と交流を図ることができました。

関係各位、何より読者としてご支持いただいている「あなた」に御礼申し上げます。6年目を迎え、より中小塾の役に立つ情報を提供していく決意を新たにしています。今後とも宜しくお付き合い下さい。

復習・顧客離れ3つの理由

さて、夏期講習も終わり、塾現場での最優先課題は「退塾防止」になろうかと思います。「顧客離れ防止」は、見込み客の絶対数が少ない塾という特殊な業種では永遠の課題と言えます。私の元に寄せられる質問でも、夏以降は退塾防止に関するものが圧倒的に多くなります。 以前、退塾防止をテーマにお話したことがあります。要約すると次のようになります。


一般に「客離れ」の原因には[1]忘れる[2]飽きる[3]卒業する、の3要素があると言われている。
[1]の「忘れる」は日常的に起こる現象である。何かの理由で長期欠席した塾生が、そのまま退塾してしまうということはよくある。これは「顧客ロイヤリティーは接触回数と比例する」という原則にも当てはまるし「人は3週間で日常化する」という原則にも当てはまる。つまり、長期欠席者を3週間そのままにしていると「塾に行かないことが日常」になってしまう。 学習意欲減退のように理由がはっきりしない場合はもちろん、病気や怪我が原因の長期欠席、スポーツや音楽活動を理由とした場合(大事な大会が近い等)、長期旅行の場合(語学研修留学、里帰り等)のように、原因がはっきり分かっている場合も、その間の接触を忘れていると思わぬ退塾に結びついてしまう。
[3]の「卒業する」は塾にとって避けられない。 パソコン教室や英会話教室、通信講座等、教育産業では当たり前のことだ。見方を広くすると、若い頃に夢中になったアイドル、ファッション、ディスコ、ギター…これらも「卒業する」に入る。ところがピンクレディーが復活したり、「中年バンド」がブームになって若い頃は手が出せなかったギブソンのギターが売れるようになるなど、「卒業生」が帰ってくることもある。中小塾が地域に根ざした活動を続けることでコミュニケーションネットワーク(口コミ・評判の流通経路)を作ることが重要。その先に「親子2代で通う塾」すなわち卒業生が帰ってくるという現象も生じる。また、評判は「卒塾生とその保護者」が作るという原則がある。卒塾生を疎かに扱う塾は評判が作れない。
退塾防止の中心課題は[2]の「飽きる」だ。人は日常化したものには安定を感じつつも「物足りなさ」も同時に感じてしまう困った?生き物である。誰もが「安定を望みつつも変化を求める」という相反する2面性を持っている。 「飽きさせない」ためには小さな変化を日常的に積み重ねることだ。例えば・教室のレイアウトを変える・メッセージポップを張る・掲示板を一新する・塾の写真館を作る…教室に来る子供達が「今日はここが変わっている」「次は何が変わっているだろう」とワクワクして通塾してくるような工夫をすることだ。
なぜ、日常の変化がそれほど重要か。それは「飽きる」という現象が子供や保護者だけでなく、あなたの中にも無意識のうちに起こっているからだ。開校3年目くらいから退塾者が目立つようになるのは、それが原因だ。放出するエネルギー量が減退してくるのだ。それを防ぐためにも日常の中の小さな変化は必要。「どうすれば子供達がワクワクして塾に通ってくれるか」を考えることで、塾(塾長)も常にワクワクしている…そうした状態を保つことが塾のエネルギーレベルを落とさないための必須条件だ。

退塾防止の鍵は日常活動にあり

もちろん、商品力(授業)の向上が第一義的に重要なことは言うまでもありませんが、マーケティング的に言うと、この「飽きる」を撲滅することが退塾防止の鍵になることは今も変わっていません。そのためにニュースレターを発行したり、イベントを企画するなど、どの塾でも様々な工夫を凝らしているのです。つまり、退塾防止策は日常活動の中にあり、けっして対処療法で済む話ではありません。 ところが、「一人の退塾者が扇動して数人の友人が退塾しそうです。どう対処すればいいでしょうか」のような質問が寄せられることがあります。正直言って手遅れです。 対処療法で最も効果的なことは「派手なイベント」を開催することです。よくある質問の一つに「どうしても9月に退塾率が高くなるのですが、何か良い方法はないでしょうか」というものがあります。最も効果的な答えはコレです。「9月か10月に浜崎あゆみ(あくまで例です)を招いてイベントをする。それを数ヶ月前から情宣して塾生の期待値を高める。」 浜崎あゆみに会えるのを楽しみにする生徒たちは、けっして退塾しません。退塾最盛期の9月を乗り越えることができれば、退塾するきっかけを失います。

費用対効果の問題はありますが、退塾による「失われた生涯売上」を計算すれば、どれだけの予算を掛ければペイするかは簡単にはじき出せます。(退塾者が拡げる悪評によるマイナス効果まで計算すれば、その額はさらに大きくなるでしょう。後述)

大手塾なら可能な手法ですが、中小・個人塾にとっては現実的な手法ではありません。 つまり、対処療法よりも予防療法の方が効果的であり、経費も少なくて済みます。その予防療法の要は意外に思われるかも知れませんが、入塾後3週間にあります。

これも、以前お話したことがある「顧客ロイヤリティ」の原則に基づいています。「顧客ロイヤリティ(塾に対する信頼感)は入塾決定直後が最も高く、3週間の間に急速に減退する」という原則なのですが、ロイヤリティを低下させてしまうと、何かをきっかけとしてすぐに「顧客離れ」につながってしまいます。

「21日間感動プログラム」(神田昌典氏命名:新規顧客獲得3週間以内に最低3度は顧客接触をする方法)を実施して、高いロイヤリティを維持することが最も効果的です。 日常活動としては、ありとあらゆる手段を駆使してコミュニケーション・ネットワークを構築することです。それは顧客の塾に対する帰属意識を高めるためです。最も有効なことは「会う」ことです。人は単純接触の繰り返しによって帰属意識を高めます。(データによると7回は必要です。)3者面談、保護者会、教育セミナー等々によって顧客(保護者)と会う機会を増やすことです。

「授業終了時に外まで見送りに行くこと」をお勧めするのも同じ理由です。

一人も退塾者を出さない決意を形にする

退塾を防止しなければならない理由は、直接の売上が減少するのはもちろんですが、退塾者がもたらす「見えないマイナス効果」が大きいからです。退塾者は、その原因が自分にあったとしても、けっして良い評判は作ってくれません。ましてや成績不振や相性不適合…有り体に言えば「期待外れ」が原因の場合は悪評を拡げられることを覚悟しなければなりません。一人の退塾者を出すと、見えない売上減少がその10倍~30倍あると言われています。 退塾者が発生した場合、一人について最低30分はミーティング(反省会)をすることをお勧めします。その生徒の「本当の退塾理由」(たいていの場合、本心を打ち明けずに去っていきます)、防止策の検証、今後の対策…関係するスタッフ全員で「過去・現在・未来」を見直すことです。

「そんなことをしても退塾者は帰って来ない」という声が聞こえてきそうですが、それはその通りです。しかし、漫然と退塾者に対して「あの子はもともと学習意欲がなかったから」「休みも多く、宿題も忘れがちで…」「保護者もあまり熱心ではなく…」と、原因を他者に求めている塾は、けっして退塾者を減らすことはできません。 大切なことは、「入塾を許可した(責任を持ってお預かりすると約束した)生徒は、一人として期待を裏切らない。最後まで面倒を見る。」という強い意識をスタッフ全員が持つことです。上記のミーティングは、その決意を「形」に表したものです。(これも私の主張の根幹ですが、すべてのものは「形」にして表さないと単なるスローガンで終わってしまいます。) 来春の爆発的な集客の成否は、これからの日常活動にかかっています。まず、「一人の退塾者も出さない」決意を「あなた」がすることです。そして、そのための「ありとあらゆる方策」を実践しましょう。

ヒントは過去の「中小塾のマーケティング講座」の中に必ずあります。ぜひ、読み返してください。

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