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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座49 塾業界激動期を生き残るために!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

既報のようにベネッセが塾業界に進出してきます。もう、何があっても不思議ではありません。いったい、今後の塾業界はどこへ向かって動くのでしょう。その方向を「マーケティング視点」から探ってみたいと思います。その考察の中から、あなたが来春に向けてしなければならない行動が見えてくるはずです。

近代日本経済の変遷

これまでのビジネスシーンを振り返ってみると、バブル崩壊までは概(おおむ)ねマス・マーケティングが主流を占め、そして機能してきました。「より良いものをより安く」を旗印に「大量生産、大量消費」を促すマーケティング法です。資本を投下し、大量生産することによって「より安い商品」の提供を競ってきました。その当時は明らかな売り手市場であり、消費者の購買理由は非常に単純で、一言で言うならば「購買欲」でした。持たざることがそのまま購入理由になったのです。車、クーラー、オーディオ…所有していないが故の購買行動が溢れていたのです。塾業界で言えば、チラシを大量に撒けば一定の塾生が確保できた時代です。当時の塾選択理由の一番は「近い」でした。「近くに塾が開校したこと」が通塾理由になったのです。ところがバブルの崩壊後、日本社会は縮小均衡市場に転換しました。歴史上、初と言ってもいい「買い手市場」になったのです。どの家にも車やクーラーがあり、複数台所有する家庭も珍しくなくなりました。そうなると「持たざること」が購買理由にならず、それどころか誰もが購買理由を失ってしまったのです。それがバブル後の不況を長引かせた1つの理由です。塾も地域に5つや6つ存在し、もう「近いこと」が選択理由ではなくなりました。それどころか遠くまで車で送り迎えしてでも「良い塾」に通わせたいと考える過程が増加しています。 買い手市場ではいわゆる「セールス」が機能しなくなります。チラシの反応率が年々悪くなってきます。多くの塾がチラシの無反応に頭を悩ませることになります。そこで登場したのが「ダイレクト・レスポンス・マーケティング」です。売り込みをせずに、商品の魅力を伝えることで「消費者から手を挙げてもらう手法」です。神田昌典氏がアメリカから導入し、一大ブームを巻き起こしました。私が「キャッチコピーに塾生募集と書くのをやめよう」と主張するのも、この手法から学んだものです。 時を同じくしてブームとなったのがワン・ツー・ワン・マーケティングです。店と客が1対1でつながり、「あなただけの商品」を提供することで消費者のニーズを掴みました。デパートは顧客を細かく類別し、それぞれに対する接客マニュアルを作りました。ユニクロが四十色以上のフリーズを制作して大ヒットを飛ばしたことは記憶に新しいと思います。近年では大手スーパーのイオンが二十四色のランドセルを販売しています。どちらも、子供にとって自分だけの色を選択できることが支持された理由でしょう。塾業界では個別指導塾の伸張がこれに当たります。「あなただけの」を追及すると、個別指導に行き当たるのは自然の流れです。 また、バブル崩壊後、消費者意識が格段に向上しました。費用対効果に対する意識が非常に強くなったのです。必要なもの、欲しいものにはお金を惜しまないが、そうでないものは極力節約しようとする行動が一般的になりました。あの不況期にもかかわらず、いわゆる「百円ショップ」が大流行した一方、エルメスやシャネルの高額ブランド商品やベンツなどの高級車を求める層が確実に増加しました。「ベンツに乗って百円ショップに出かける時代」と言われたものです。 そこには所得層の2極化が背景にあることも見逃せません。かつて護送船団方式によって理想的な?総中流社会を維持してきた日本では、平均所得の前後にほとんどの人が属していました。欧米諸国に比べてビックリするような高額所得者は存在しない代わりに、賃金労働者の年収は格段に高かったものです。その体制を支えていたものは言うまでもなく「年功序列」と「終身雇用」です。ところが、その制度が崩壊すると当然のように所得の2極化が始まります。塾業界でも月謝が十万円を超えるような塾が登場し、一定層の支持を集めています。 この間、塾の役割も大きく変わってきました。かつて、塾が必要悪と評されていた頃は、塾自らが正当性を訴えるため、その役割を「学校教育の補完」と主張していました。「七五三教育」(高校生の7割、中学生の5割、小学生の3割が学校授業を理解していないという現象)と言われていた時代は、それでもニーズが高かったのです。しかし、一九七〇年代をピークとして学習内容が削減され、絶対評価、学校週5日制の導入後は補習に対するニーズが極端に低下してしまいました。現在、教科書準拠の補習塾(特に小学生部門)は壊滅状態に陥っています。落ちこぼれの対極にある吹きこぼれ(公立学校授業では満足できない子供たち)対応が求められ、中学受験ブームを生むこととなりました。今、小学生部門が好調なのは「中受」「英会話」「スポーツ教室」と、公立学校では対応できない分野ばかりです。 また、歴史的には古い「塾」も産業として見た場合には未熟で、まだまだ基盤が安定していません。大手塾のほとんどが創業社長であり、ようやく代替わりを迎えようとしている時期です。昨今の合従連衡、M&Aの背景にはそうした事情があります。塾業界が激動期、転換期を迎えているのも自然の流れなのでしょう。

資本の論理から感情の論理へ

今後の日本経済、塾業界はどこに向かっていくのでしょうか。私は「資本の論理から感情の論理へ」と主張しています。資本の論理が「より良いものをより安く」ならば、感情の論理とは「どこにもないものをより高く」と表現できます。もう、学校と同じ、他塾と同じでは消費者の支持を得ることは難しいでしょう。どこにもない、その塾にしかないもの(暗黙知)を作り上げ、それを求める消費者に「より高く」買っていただくことを考える必要があります。「どうしてもその商品を欲しい」という消費者の感情にフォーカスしたビジネスしか生き残れない時代に入っているのです。 残念ですが、中小塾はその取り組みが遅れています。本来、大手塾の方が変化が遅くなる理屈のはずですが、近年の動きを見ると大手塾の方が変化に積極的で、中小・個人塾の行動が鈍いように感じます。このままでは来春の募集は厳しいと覚悟しなければなりません。 これから半年間のうちに次のことを見直してください。 ①自塾だけのサービス(暗黙知)は何か。 ②それを知らしめる戦略(マーケティング)をどうするか。 私は今後有効なマーケティング法としてフレンドシップ・マーケティングを提唱しています。(以前はネットワーク・マーケティングと言っていたのですが、ネットワーク・ビジネスと混同されやすいので改名しました。)コアのファン(塾を信頼し、見込み客をつれてきてくれる顧客)を増やし、そこから口コミ、紹介を募る手法です。 具体的には「保護者」「卒塾生」のネットワークを作ります。塾は対象年齢層が非常に狭い特殊な業種です。次々と新規顧客を作り出す必要があります。しかし、新規客獲得コストは紹介に比べ十倍程度になってしまいます。できる限り紹介による顧客獲得を目指した方が有利なのは確実です。また、子供は卒塾したあと他地域へ進学、就職していきますが、基本的に保護者は移動しません。その保護者をネットワークし、子どもが卒塾した後も紹介をしてもらえる仕組みづくりをするのです。そのためには、例えば母親が集えるコミュニティーを塾が提供する、地域住民を対象としたセミナー(勉強会)を開催するなどの積極的な「地域との関わり」が必要となってきます。PTA活動や自治会への参加も有効でしょう。 ピンチはチャンスです。昨今の大手塾を中心とした合従連衡は、見方を変えれば「向こうが勝手に差別化を図ってくれている」状態です。同じ土俵に乗らず、あなたはあなたの…そう、テニスコートを作るのです。あなたは相撲では絶対に白鵬には勝てませんが、テニスならば勝てるかもしれないのです。そして、テニスコートの周りにテニスの好きな観客を集めるのです。

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