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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座(8)「成功したければ現場を離れろ!」

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


休まない人は成功しない

私は仕事柄多くの塾を訪問する。すると、業績不振に悩んでいる塾長の共通点が浮かび上がってくる。


その一つが「休まない」。以前お話したように、朝から晩まで、あるいは休みをつぶして仕事をする。昔から―これを言うとケンがあるが-「貧乏暇なし」と言われる。本当である。理由ははっきりしている。いつもと同じ環境では新しい発想、新しいアイデアは絶対浮かんでこないのだ。教室にいる限り、教室にあるいつもの机、いつもの椅子、いつもの消しゴム、いつものペン、いつもの電話に思考が左右されてしまう。新しい発想というのは、もうこれ以上アイデアが出ませんというところまで絞って、絞って、これ以上でないという状態になった時、ふっと天から降ってくる。


その場所は、例えば車を運転しているときかもしれない。あるいは温泉かもしれない。あるいは、ある人はゴルフをやっているときかもしれない。そういったリラックスしているときに-ベーター波とアルファー波の話は皆さんにとって釈迦に説法になるので詳しくは説明しないが-アルファー波が出て、斬新な発想が降ってくる。いつもの事務所でどれだけ頭を抱えても、どこにでもあるような、昨日も考えたような、去年もやったような発想しか出てこない。だから塾長は積極的に現場を離れなければならない。


理想を言えば、1週間くらいの休暇を年に3回は取りたい。せめて2泊3日の休みを定期的に取ってほしい。2泊3日あれば、行こうと思えば温泉に行ける、ゴルフも行ける、映画も観に行ける。そういった環境が大事だ。それは頭に入れた情報を熟成させるのに必要な時間なのである。


よく大企業の社長がゴルフばかりしているとか、外遊ばかりしているという様子が伝えられる。あの人たちが、いつも社長室にこもっていたら次の戦略は絶対出てこない。だからゴルフに行く。経営者にはオンとオフはない。「今日は休みだ」「今日は仕事だ」そんなことを言っているのは従業員だ。経営者はいつもオンであり、いつもオフである。


私もゴルフをやるが、平日でも平気で行く。平日にゴルフへ行くことに後ろめたさを感じている人は、経営者ではない。その代わり日曜日でも関係なく仕事をする。オンとオフは自分で決める。オフの間もアンテナは立てている。立てていないと発想は降ってこない。だから避雷針みたいなものを立てる。


ところが多くの塾長は、それができない。「俺が、俺が」になってしまう。子供のために-これは非常に大事なことだが-休みを削る。寝る時間を削る。そして、収入を削る。それでどんどん苦しくなる。ぜひ、休みを取って温泉へ行っていただきたい。これができる人とできない人で大きく違ってくる。


戦略構築は現場を離れて

現場を離れる効用は大きく分けて2つある。一つは前述のように頭をリフレッシュさせ思考の再生産を促すことだ。もう一つは戦略構築の時間を作るためだ。業績不振の塾は、これが決定的に欠けている。誰もが「塾生は増やしたい」と言う。ところが、「何人の塾生を集めたいのですか」と問うと、それに対する明確な答えがない。「1人でも多ければ多いほどいい」で終わってしまう。つまり、明確な目標とか願望がない。だから、それだけの人数を集められない。


これは願望がないというよりも、実は自信がないのかもしれない。最近、自信を無くしている塾長が本当に多い。口には出さないが、「自分には100人集められない」と思っている。これを専門用語で言うと「メンタルブロック」と言う。日本語で言うと「内制止」。誰もが心の中に自分には無理だと思っている範囲がある。人は、その範囲をはみ出すことができない。はみ出すような発想が浮かぶと、「あっ、自分にはできない。無理だ。」と思ってしまう。これがあるうちは、そこを越えることは絶対実現できない。八〇点取れないと思っている生徒は、絶対八〇点が取れない。我々大人も一緒だ。そのメンタルブロックの範囲が狭く、固くなっている人がいる。


私は、そういった方とお話するときに次のことを提案する。例えば5年後でもいい、あなたが目標を達成したときの理想の姿を思い浮かべていただきたい。理想の自分を想定するのだ。


午前中はゆっくりして過ごす。昼近くに教室に入って、まず塾長室でハーブ茶を飲む。経済新聞を読み、郵便物とメールをチェックする。そうしている間に社員講師がやって来る。


ミーティングの後、やがて活気に溢れた授業が始まる。塾生数は200人を数え、皆元気に通塾してくる…そういった理想像を描くのだ。その理想像がないのに、その理想には近づけない。次に必要なのがビジネス・モデルを作ることだ。理想像を具体的な設計図にする。塾生数は何名か、クラス定員は、授業料は、時間割は、人件費は…そうしたひとつひとつの項目について設計図を書く。やってみると分かるが、各項目の整合性を図りながら設計図を描くことは結構難しい。


ビジネスモデルができて、ようやくそれを実現するための戦略構築へ進む。ここまでを広い意味での戦略部門、ここからを戦術部門と分けると、実は、この戦略構築までで業績の8割は決まる。戦術は「技術」なので誰でも手に入れることができる。簡単に言ってしまうと、お金さえ払えば手にすることができる道具である。


釘を打つときに手で打つ人がいるだろうか?誰もが金槌を使うはずだ。戦術というのは、この金槌だ。


問題は、あなたがどんな釘を打ちたいのかということだ。小さな釘を打つときは小さな金槌でいいが、大きな杭を牧草畑に打とうと思えば、当然ハンマーを使うだろう。ほとんどの中小塾は、自分がどんな釘を打ちたいのかがはっきりしないのに、まず「金槌、金槌」と言っている。どこかの塾が「あの金槌で成功した」と聞けば、慌ててその金槌を買いに行く。


ところが、その塾が打とうとした釘とあなたが打とうとする釘は違う。だから役に立たない。それで、「何だ、話が違う。」(これは実名を出すと差し障りがあるが)「CAIを導入しても生徒は増えないじゃないか!」ということになってしまう。当たり前だ。戦略の部分が全然違うのに、戦術の部分だけ借りてきてもダメなのだ。自分の釘とあの塾の釘は違う。それが、分かっていない。


まず、自分はどんな釘を、どの範囲で何本打ちたいのか。それを明確にすることだ。そのために休みを取って現場を離れてほしいのである。繰り返すが、いつもの場所では「いつもの発想」しか浮かばない。それでは飛躍的な発展は難しいのである。

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