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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座(3)「だから、あなたのチラシは反応が無い」

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


「塾生募集考」再び

 先月号でチラシのキャッチコピーに「塾生募集」はハードルが高すぎて反応が薄いと書いた。その理由をもう少し説明しよう。一言で言って、買い手市場になり消費者の購買行動が以前と変わってきたのである。


あなたの塾の生涯価格を計算してほしい。月額2万円の授業料ならば、3年間で72万円。入塾金、教材費、テスト代、講習費等を入れると100万円近くになる。ほぼ自動車を買うに等しい値段である。あなたは車を買うとき、B4のチラシ1枚で購入を決定するだろうか。多分、販売店をいくつか回り、説明を受け、試乗もした上で決断するはずだ。ところが、いざ自分の商品を売ろうとするときは紙1枚で済まそうとしてしまう。「塾生募集」は、「100万円の商品を買って下さい」と言っているに等しい。ハードルが高い所以である。


実は「塾生募集」のチラシが反応の薄い理由がもう一つある。塾が塾生を募集するのは当たり前だからである。人は当たり前のことには反応しない。


例えば、看板に「魚売っています」と書く魚屋はいないだろう。魚屋が魚を売っていて驚く人はいないが、もし、魚屋の店頭に泥付きの大根が山積みされていたら…。「何事か」と思わず覗いてしまうのではないだろうか。そして、そこにこんなポップが掲げてあったら…。


新鮮な秋刀魚、入荷しました!今朝採れたての大根おろしで召し上がってください。最高に美味です。

秋刀魚と大根がバカ売れすることを保証する。


塾が「塾生募集」と言うのは魚屋が「魚売っています」と言うようなもので、誰も反応しなくて当然である。反応を得るためには、あなたの店先(チラシ)に「泥付きの大根」を山積みする必要がある。 同様のことが「塾名」にも当てはまる。残念だが、ほとんどの母親はあなたの塾名には興味がない。にもかかわらず、ほとんどの塾のチラシが「塾生募集」の次に大きな文字で塾名を表示している。あなたがハワイツアーを選ぶ場合、旅行代理店の名前に注目するだろうか。塾名が威力を発揮するのは、その名前が地域でブランド化している場合だけだ。あなたの扱っている商品がバッグならば「エルメス」という名前だけで売れる。


チラシの作り方・具体策

まず、チラシの目的について確認してほしい。ほとんどの塾が「塾生獲得」を目的としてしまう。そうしたチラシの反応が悪いことは既に述べた。けっしてチラシで入塾を求めてはいけない。チラシの目的とは「問い合わせの電話をしてもらう」ことである。塾を探している母親に興味を持ってもらい、問い合わせてもらうこと。それがチラシの目的である。そう考えれば、チラシの作り方は根本から変わってくる。反応率の高いチラシの条件について解説しよう。


反応率の高いチラシの原則

文字・写真で埋め尽くされていることチラシは初めて会う人への自己紹介だ。大前提として相手が知りたいことを全て説明しなければならない。授業料を記載していないチラシを見かけることがあるが、それでは反応を得るのは難しい。よっぽどの金持ちでないと、寿司屋で「時価」としか書いていないトロを注文する勇気はないだろう。また、初対面の店主に対して「トロっていくら?」とは聞けない。ハードルが高すぎる。授業料はもちろん、指導科目、時間割等、細かい条件まで記載するのは最低条件である。弁護士でも税理士でもキャバクラ?でも、明朗会計を打ち出したところが圧倒的な支持を得ている。塾も同じ。


また、塾の方針や理念もしっかり伝える必要がある。見合いで結婚相手を探すときは、肩書きや履歴だけを用意した人よりも、自分はどんな人間で、趣味は何、こんな結婚生活をしたいと長文の手紙を書いてくれた人のほうに好感を持つに決まっている。B4両面では書ききれないというくらいの文章量があるとよい。もちろん、隅々まで読む人は少ないかもしれない。しかし、それで良いのである。意識の高い保護者は空白を嫌う。


デザイン事務所に任せると、イメージ写真を大きく使い、余白だらけの一見かっこいい版下を作ってくる。キャッチコピーも、当り障りのない美辞麗句が並ぶ。これは全く効果がない。多少文章が下手でも塾長自らが文面を考えるべきである。それでこそ、「塾の匂い」が伝わる。また、入塾面談の時も違和感を持たれない。本来の塾の、あるいは塾長の実像とかけ離れた「イメージ広告」は、100害あって何とかである。そういった意味では、廉価ではあるが業者が企画する「共同チラシ」はお勧めしない。


ほとんどの塾が「塾生募集」「塾名」「募集要項」「頑張る君を応援します」だけでチラシを作っている。すると塾の姿が伝わらない。塾の姿が分からない母親は問い合わせをするか。残念だが電話をかけることはない。人は「分からないものは考えない」習性を持つ。つまり、選択対象からはずしてしまう。「こんなことは説明しなくても分かっているだろう」という考えは厳禁である。


一言で言うと、チラシ上で塾の疑似体験が出来るかどうかがポイントである。チラシを読んだだけであなたの塾を見学したようなイメージを与えることだ。そう考えて作成すれば、自然と文字数は増えていく。塾の理念、指導方法、教材、入試情報、講師紹介、進学実績、授業風景、塾生の声…、あなたが説明しなければいけないことは山ほどある。


チラシの文字数と問い合わせ数は比例すると考えて間違いない。毎年多くの生徒を集める塾のチラシは、きまって細かい文字でびっしりと埋め尽くされているものだ。


手抜きチラシの弊害

実は、1時間で作ったような空白だらけの「手抜きチラシ」だと、授業そのものも手抜きをしているのではないかと思われてしまう。そこに書かれている文章はもちろんだが、人はチラシ全体のイメージにも思考を左右される。あなたのチラシは「手抜き」をイメージさせていないだろうか。そこを改善するだけで反応率は劇的に変化する。要はチラシの作成にもっと時間をかけ、頭に汗をかくことである。


文章は情報を伝えると同時に、あなたの思いを伝えるものである。

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