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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座56 塾スタッフ全員の文章力向上を図れ!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


コミュニケーションは最重要スキル

もし、ビジネスに最も重要なスキルは何かと尋ねられたら、私は迷うことなく「コミュニケーション能力」と答えます。どんなに素晴らしい商品を開発したとしても、それを提供するスキルがなければ文字通り宝の持ち腐れです。売り手と買い手、共に「人」による営みですので、コミュニケーション能力のない人はビジネス・シーンには不向きということになります。 コミュニケーションの「場」は、大きく3つに分けられます。 1つは言うまでもなくフェイス・トゥー・フェイス、会って意思の疎通を図る場合です。実際に会えば、言葉以外に身振り手振りや表情で意思を伝えることができますので、誤解が生じる可能性は限りなく低くなります。

2つ目は電話です。これは身振り手振りや表情は使えません。そのため、誤解を生じる危険性が高くなります。これを逆手にとって大繁盛?しているのが「振り込め詐欺」です。実際にはあり得ない風体の若者が「弁護士」や「刑事」を騙(かた)って電話を掛けてくるのですが、「ご主人(あるいは息子さん)が痴漢をしました」「交通事故を起こしました」という下手な小芝居にパニックに陥った人は易々と騙されてしまいます。これも相手が見えないという電話の特性を利用したものです。電話対応を疎かにしていると、あなたの気付かないところで誤解(不評)を与えているものです。それでも声の調子は伝わりますので、対応方法さえ間違えなければ電話はコミュニケーション・ツールとしては有効です。

最も難しいのは「文章」によって意思を伝える場合です。もともと文字とは記号でしかなく、上手に使わないと、そこに感情を込めることができません。実は、この文章によって意思を伝えるということが最も難しく、しかし、塾においては最も頻繁に利用されるコミュニケーション・ツールです。ところが、多くの塾でこの「文章」について無頓着な傾向が見られます。チラシ・ホームページだけではなく、塾内で配る「三者面談の案内」「夏期講習の案内」等も同様です。コミュニケーションの定義は「意思を伝えて自分の望むように相手に行動してもらうこと」です。なぜ、「夏期講習の案内」を配るのでしょう。当然、夏期講習を受講して欲しいからですね。ならば、受講したくなるような案内を作る必要があります。ぜひ、文章力の向上を目指してください。スタッフ全員の文章力が向上すれば、塾全体のコミュニケーション能力は飛躍的に高くなります。

検証・案内文の作り方

さすがに、どこかの塾さんの案内を例にするのは憚(はばか)られるので、私が顧問を務めている異業種交流会の案内を例にして解説します。Aは、私のところに送られてきたFAXです。文面は次のようになっています。

「平素は経政会の運営・推進にご理解、ご協力を賜りましてありがとうございます。下記の通り、来期(二十年度)新矢野グループによる顔見せ及びグループ会を開催致します。急なお願い、並びにお忙しい中恐縮でございますが、ご参集いただきますようお願い申し上げます。」

あとは日時、場所の紹介と出欠の枠があるだけの典型的な定型案内です。この案内を見た(「読んだ」ではありません)人が持つイメージを想像して下さい。この案内を見た人は「行きたい」「行かなければならない」と思うでしょうか。多分「グループ会か…面倒だな…」といったところではないでしょうか。 定型は重要です。決まった形で案内することで、一定のイメージを提供することができます。企業のイメージ・カラーなどは、その典型です。しかし、こうした「対象者に、わざわざ会合に出掛けなければならない苦痛」を強いる場合は、それなりの工夫をすべきです。そうでなければ、読者は行動に移してくれません。出欠の返事を出す前に、案内を脇にやって、そのまま忘れてしまうかもしれません。 Bは私が作り直したものです。同じA4版1枚にまとめました。一目で分かる違いは「文字の量」です。以前、チラシの作り方で「質より量の法則」をお話したことがありますが、人は最初の1秒で全体のイメージを掴んでしまいます。その時、紙面全体にびっしりと文字があるのと、Aのように隙間だらけの案内と…どちらに「書き手の熱意」を感じるかは言うまでもありません。 また、見出し(キャッチコピー)を「ぼ、僕がグループ長でいいんですか?」としました。1秒で認識できる文字数はそんなに多くありません。その短い言葉で文章全体に興味を持ってもらう工夫です。あなたも、暇つぶしの本を探しに書店へ行った時のことを思い出してください。何気なく手にとってペラペラとページをめくるのは、題名に惹かれたからではないでしょうか。キャッチコピーは重要です。 文章の出だしは次のようになっています。

「矢野には『青天のへきれき』でした。あれは2ヶ月ほど前のことです。突然、東さんからの呼び出し電話を受けたのは。『矢野さん、話がある。』東さんの、いつになく真剣な声の呼び出しに、正直、『ああ、俺、何か問題でも起こしたかな。また、苦情でも寄せられたのだろうか』と、憂鬱な思いで出掛けました。 ところが、開口一番、東さんはとんでもないことを言い出したのです。『来年度、桑畑会長に変わって私が経政会の会長を務めることになった。矢野さんには副会長として私を支えてもらいたい。』…」

物語風の文章にしました。物語にして伝えると、読者の共鳴を誘う効果があります。誰もが作り話と知りながら、ドラマの主人公に自己投影して感動します。あなたの塾にも様々な物語があるはずです。それを紹介するのです。単に「昨年の夏期講習受講者の中には偏差値を10もUPした生徒がいます」と、事実として伝えるのではなく、その生徒と講師の「ひと夏の格闘物語」として伝えるのです。 ややもすると、昨年の案内をデータで引っ張ってきて、変更点だけを直して「今年の案内」を作ってしまいます。いわゆる前例主義です。それでは、あなたの熱意や塾としての本気度を保護者や生徒に伝えることはできません。当然、あなたの望む行動に移してくれることもありません。一度、塾からの発行物を総点検して下さい。文章力はコミュニケーション能力の基礎です。ここが向上すれば自然と全体のコミュニケーション・レベル全体はアップします。どんな商品でもそうですが、ハードとソフトのバランスが重要です。文章力は塾のソフトの根幹を成す重要なスキルです。

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