top of page
執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座45 シャワーキャップから見えてくるもの

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

これは私のクライアントの塾で実行している「小さな親切」の話です。 車の送迎が増えたとはいえ、塾に自転車でやってくる子供はたくさんいます。教室の前には何台もの自転車が並んでいます。その時、雨が降ってきました。さあ、塾長の「あなた」はどうしますか? 全ての自転車を屋根の下に収納できる塾は少ないものです。ある大手塾の幹部に聞いたところ「タオルを貸し出してサドルを拭いてもらう」という答えが返ってきました。それに対して、その塾はもう一歩進めた配慮をしているのです。それは…。 みなさんは「シャワーキャップ」をご存知でしょうか。男性の方は馴染みが薄いと思いますが、シャワーのとき髪が濡れないようにかぶる帽子です。多分、一〇〇円ショップへ行けば「6枚一〇〇円」で売っています。このシャワーキャップがサドルカバーに最適なのです。 濡れたサドルに座るのは気持ちが悪いものです。子供たちが外に出てみたら、自転車のサドルが濡れないように「サドルカバー」(実はシャワーキャップ)が掛けられていた…もう、感動モノです。そして、その光景は近所の人はもちろん、車で迎えに来た保護者の目にも当然触れることになります。わずかの投資で塾の評判が上がります。絶対のお勧めアイディアです。 さあ、あなたの「シャワーキャップ」を見つけてください。神は細部に宿ります。

大手塾の土俵に乗らない

実は中小塾が大手塾に負けないためのヒントがここにあると考えています。多くの中小塾が失敗するパターンは「大手の土俵に乗ってしまうこと」です。指導システム、教材、チラシの作り方、価格設定…どれも大手の模倣をしてしまいます。 皆さんは「コピー商品」をご存知だと思います。ある商品が評判になると、必ず類似品が作られます。その時のパターンは決まっています。まず、コピー商品をつくる。そして、本家よりも安く売る。真似をする側は「同等の商品を安く提供するのだから売れるはずだ」と考えます。ところが実際はそうはなりません。ほとんどの場合、本家の売り上げが伸びていきます。理由は簡単です。まず、類似品が出回ることで商品に対する市場の認知度が飛躍的にアップします。すると、消費者の心理としては「どうせ買うなら本物を買おう」となるのです。類似品には「安ければ何でもいい」と考える客だけが集まってきてしまいます。これではいつまで経ってもコアの顧客、いわゆるファン(お得意様)は作れません。かつて「たまごっち」が一大ブームになった時も、数々の安価な類似品が出回りましたが、結局、「たまごっち」の1人勝ちでした。 同様のことを中小塾がしているのです。「近くの大手塾が25,000円の授業料ですので、うちは20,000円にしています。」類の声を何度聞いたことでしょう。この発想では絶対に近くの大手塾には勝てません。 価格戦略で言うと次の事例も同様です。 大手塾が夏期講習0円で進出してきた場合、多くの中小塾が「まいったなあ。とりあえず、うちも0円で行くか!」と安易に考えて追随すると、確実に失敗します。価格設定で同じ土俵に乗ってしまうと、価格による差別化ができなくなります。すると、綺麗なチラシ、テレビコマーシャル、新築の豪華な塾舎…その圧倒的な資本力に勝てません。いくら中身の良さを説いても通用しません。なぜなら、人は0円のもの(特に形のないもの)には0円以上の価値を見出すことができないからです。同じ0円の商品の場合、選択基準はそれ以外の形あるもの(チラシ・塾舎等)に委ねられてしまいます。 以前、札幌での0円戦争の中、高額の春期講習を企画して成功した塾の例を紹介したことがありますが、中小塾は大手の作る土俵に乗らず、独自の土俵を作ることを考えるべきです。 指導システムや教材も同様です。大手の真似をしている以上、絶対に大手には勝てません。もちろん、それらを蔑(ないがし)ろにしても良いというわけではありません。それを「売り物」にすることを避けましょうと言っているのです。極論すれば「大手の強みは捨てろ」ということです。大手とは違うアイテムを作り、それをアピール材料にするのです。

中小塾の暗黙知は塾長自身

私は中小・個人塾の優位点は地域密着にあると考えています。毎年、講師の移動が発生する大手塾では、卒塾生が大学合格の報告のため3年振りに塾を訪問してみたら知らない先生ばかりだった…ということがあります。これでは本当の意味での地域密着は不可能です。当然、それ以外の、合格実績や指導システムの優位さでアピールすることになります。本来、大手の出来ない部分を追求すべき中小塾が同じようなアピールをしていることが残念でなりません。チラシを見ても「テスト対策」「自習室」「特別講習」「個別面談」「漢検・英検対策」等、代わり映えのしない内容が並んでしまいます。あなたがアピールすべきポイントは別のところにあります。 私は中小塾、特に個人塾がアピールすべき第一のポイントは「塾長」そのものだと考えています。「テスト対策」「自習室」「特別講習」「個別面談」「漢検・英検対策」はどこの塾でも実行しています。他の塾には存在せず、あなたの塾にしかない暗黙知…それは「あなた自身」です。まず、あなた自身が「カリスマ先生」になって、地域になくてはならない人物になることです。そして、あなたの「人となり」を伝えることで塾のイメージを伝えるのです。個人塾にとって「塾=あなた」なのですから。 ところが、個人塾の経営者は自分を売ることに躊躇する傾向が強くあります。経営者本人から「恥ずかしい」「厚かましい」という声を聞きます。しかし、あなたが本当に子供たちの役に立つ塾経営者だという自信があるのでしたら、堂々と伝えるべきなのです。チラシのキャッチコピーには「○○先生に会えて良かった!」(○○には「あなたの名前」が入ります)と書き、卒塾生の「喜びの声」を掲載するのです。あなたは地域活動・PTA活動にも積極的に参加しなければいけません。電化製品は駅前の大型安売り店ではなく地域のパパママショップを利用します。地域と共生するのです。卒塾生の家に年に一回は家庭訪問をして悩み相談、進路相談に乗りましょう。そう、あなたは人生のアドバイザー、地域の子供たちは全て「あなたの子供」です。 面倒見の良さ-これも中小塾が盛んに使う言葉ですが、「形」に表さないと相手には届きません。冒頭のサドルキャップの話に戻りますが、人は「サドルキャップをかぶせる行為」そのものにも感動しますが、それ以上に「その行為に象徴される経営者の気遣い」に感銘を受けるのです。誰もが「具体的事象に接して、初めて抽象的なイメージを持つ」性質を持っています。サドルキャップという小さな具体的事象を目の当たりにして「ああ、あの塾は面倒見が良い」という印象を持ってもらえるのです。 ある塾はスタッフ全員参加で、塾生がいつもお世話になっている公園の清掃をしています。(生徒会がボランティアで最寄駅の清掃をしている私立学校もあります。)ある塾は最近流行のポイント還元を品物ではなく、地域のボランティア団体に塾生名で寄付しています。ある塾はお迎えに来て待っている保護者のために温かい飲み物を振舞っています。ある塾は高校資料作りのため、学校説明会では最前列に陣取り、容赦ない?質問を学校関係者に浴びせることで有名になっています。ある塾は…。 まず、大手の強みを捨て去ることから始めてください。そして、自塾の独自性を見付けてください。この学習塾受難の時代に頑張っている「あなたの塾」には、必ず何か(あなたも気付いていない)強みがあります。それを分かりやすい表現(形)にして伝えましょう。あなたの塾を必要としている「客」は大勢いるのです。あなたの塾の存在を知らずにいる人に、新たな選択肢として「あなたの塾」を紹介して「客」になっていただき、一人でも多くの子供たちを幸せにすることが塾人としての社会貢献の王道です。 ちなみに、サドルキャップを真っ先に実行した塾は、ここ数年売り上げが急増し、昨年は念願だった塾舎を新築しました。

最新記事

すべて表示

中小塾のためのマーケティング講座113 理論武装には文章力が不可欠

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 -来年度に向けた戦略構築を開始せよⅢ- 塾からの通知はコミュニケーションのツール 今の時期から新年度移行期まで、塾では様々な「案内」を配布します。「入試直前講座のご案内」「友人紹...

中小塾のためのマーケティング講座115 塾・ビフォーアフター

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 -チラシ戦略の成功事例- 塾業界にとっての「正月」である年度替りの時期がやってきました。この2013年度を飛躍の年にしたいものです。あらたな年度の戦略構築に役立つ情報を紙面を通し...

中小塾のためのマーケティング講座110 塾が「中だるみ」を奨励してはいけない

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 -テスト後のブラッシュアップが評判を作る- 「テストは終った後が大事」を実践する 現在、全国の中学校は2期制と3学期制が混在して、塾としてはやりにくくて仕方がありません。複数の地...

ホームページの改善に役立つ
チェックシートをプレゼント!

bottom of page