この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
私がこの紙上セミナーで皆さんに提案しているマーケティング法は次の二つです。
1つは「ダイレクト・レスポンス・マーケティング」です。これは、こちらから売り込むのではなくて、「客」の側から手を挙げてもらう方法です。例を挙げると「塾生募集」からの脱皮です。チラシで「塾生募集」という大きなキャッチコピーを使うことは、すなわち「入ってください!」とお願いしているようなものです。もう、このキャッチコピーに反応する「見込み客」は存在しません。
とにかく、徹底して売り込みを排除します。なぜなら、買い手優位になった市場(物余り市場)では、客は売り込まれることに嫌悪感を持つからです。誰だって、紳士服売り場で「いかがですか。何をお探しですか。色は?これなどはお似合いですよ。」などと店員が近づいてきたら逃げ出したくなります。それ以上に根本的な理由は「塾人、特に中小塾経営者はセールスが苦手」ということです。
教育を志向する人はセールスに向かない場合が通常です。私もそうです。自分を売り込むことは本当に苦手です。自ら名刺交換にさえ行けません。
フレンドシップ・マーケティングの勧め
そこで、もう一つの手法を提唱しています。それが「フレンドシップ・マーケティング」です。最初はネットワーク・マーケティングと言っていたのですが、健康食品等を扱うネットワーク・ビジネスと混同されそうなので、最近はフレンドシップ・マーケティングと言っています。
簡単に言うと、客とお友達になろうということです。そして、客の友達を紹介してもらう…友達の輪を広げ、そのネットワークの中から見込み客を作っていく手法です。
「お友達」というと誤解されそうなのですが、これはけっして客と馴れ合いになることではありません。これまでのセールスは「買わせれば勝ち」という風潮があり、逆の言い方をすると「買わされた客は負け」ということになってしまいます。あなたが「売り逃げ商売」をしているのならば催眠商法だろうが霊感商法だろうが(倫理的、法的問題はありますが)勝てば官軍です。しかし、塾の「客」は例外なく「常連客」です。「勝ち逃げ」は不可能です。ならば、全ての客に対して「友人」としてWIN-WINの関係を築き、共にメリットのあるビジネスに徹した方が上手くいきます。
例を挙げると、あなたの友人が「子供をお前の塾に入れたい」と言ってきたらどうするかを考えてみることです。ほとんどの場合、「おい、本当に俺のところでいいのか?」と思うでしょう。そして、親身になって相談に応じ、その子供にとって最も効果的な選択を一緒に考えるはずです。その上で「それでもお前のところで世話になりたい」と言ってきたら「よ~し、任せておけ。俺が何とかしてやる!」と思うのではないでしょうか。
そうした関係を全ての顧客、見込み客と築くことがフレンドシップ・マーケティングです。
すると、入塾希望者には面談が欠かせなくなります。それも、単なる塾説明ではなく、学習カウンセリングのような面談です。もしかしたら、客の要望によっては「あなたの塾」ではなく「隣の塾」の方が向いているかもしれません。その時は涙を呑んで「この子には当塾よりも隣の個別指導塾の方が向いていますよ!」と、アドバイスをすべきです。もしかしたらその子は隣の塾へ行ってしまうかもしれません。しかし、その親子は誰かに塾のこと、勉強のことで相談されたら必ず言うでしょう。
「あの(あなたの)塾へ行ってごらん。親身になって相談に応じてくれるよ。」
そして、あなたの塾が最も相応しいと判断したときは、それこそ「よ~し、分かりました。当塾にお任せください。」と、堂々と宣言すればいいのです。
異業種に学ぶフレンドシップ・マーケティング
昨年秋、ある建築業界の勉強会に出席したときのことです。お父様が大工をしていたという35歳の工務店二代目経営者の事例発表だったのですが、それが正にフレンドシップ・マーケティングそのものだったのです。異業種とはいえ(いえ、異業種だからこそ)参考になると思い、ここで紹介します。
その工務店は7年ほど前から下請け中心の業務から「元請け」への転換を図りました。その第一歩として、それまで「元請け」で建てた家を全て回り、全てのメンテナンスを無料で行なったのです。さらに、その業界では当たり前だった「新築後1年、3年、5年、10年のアフターメンテナンス」の常識を破り、「毎年訪問」を実行しました。最初は業者の訪問を快く思っていなかった施工主も、3年目くらいになると「熱心に来てくれるね。実は友達が今度、家を建てたいと言っているので相談に乗ってやってくれないか。」と、急速に紹介客が増えたそうです。結果、その工務店は10年前の10倍近い売り上げを達成することになります。正に、私がいつも主張している「評判・紹介は客ではなくなった人が広げてくれる」を証明してくれています。
この話を秋のセミナーで紹介し、次のような提案をしました。
「卒塾した生徒の家に毎年家庭訪問をし、勉強のこと、進路のことについて相談に乗ってあげましょう。」
多くの中小塾経営者は「忙しくてそんな時間はない。」と言うでしょうが、だからこそ実行すれば大きな評判を作ることができるはずです。
すると、セミナー参加者から年末に次のような報告が来ました。
セミナーで教えられた通り、十二月に昨年の卒塾生の家にクリスマスケーキを持って訪問してきました。すると、多くの感謝の声がメール、手紙で送られてきました。少し紹介します。 「こんにちは。ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか?今日はケーキをわざわざ届けていただいて有り難うございます。家族共々喜んでおります。これから寒さも増してきますが、充分お体に気をつけられてくださいませ。では、少し早いですが良いお年をお迎えください。来年も宜しくお願いします。」 「こんにちは、ご無沙汰しています。今日はわざわざ家の方においでいただきありがとうございました。ちょっとびっくりしました。○○も頑張って何とかやっています。」 「こんばんは、今日はご挨拶に来て下さり、ケーキまで頂きどうもありがとうございます。思いがけない先生のご訪問は、○○も口にはしませんが嬉しく思ったようです。今もですが、これからも学業面や色々と大変な曲面を迎えると思います。今日、先生がお顔を見せて下さった事は、これから先の励みになる事と思います。どうもありがとうございました。」 「先日はありがとうございました。先生にはいろいろとお世話になり、感謝しております。実はメールで大変申し訳ないのですが、週に一度、また数学を先生にみてもらったらと思っていた次第です。本人も先生ならと、その気になっております。突然で大変申し訳ございません。お願いできないでしょうか。」 ということで、卒塾生が一人、帰ってきました。
この、「とにかく良いと思ったことはすぐに実践する」姿勢は素晴らしいと思います。中小塾が激動の時代を勝ち抜くヒントがここにあります。
あなたはどうやって地域とフレンドシップを結びますか?そして、それを実行に移していますか?
一つ一つの地道な行動(実践)によってのみ、塾の力量は向上するのです。今期を実践の年にしてください。健闘を期待しています。